
缶乃's answer
#あのキス
『あの娘にキスと白百合を』の裏話同人誌的なものを作ろうと計画していた時期があり、それ用に書きためた裏話的テキストがあったので、それを載せますね。
◆白峰と黒沢
「あの娘にキスと白百合を」は「黒沢ゆりねが人間性を獲得するまで」の話のつもりです。
昔からコンプレックス百合が好きで、性別や年齢や境遇がほぼ同じなのに能力が違うのが一番コンプレックスを刺激するだろうと思い、このCPを作りました。といいつつ対等にライバルであればなんでも好きです。
白峰の母親との確執もやりたかったことのうちのひとつです。
白峰の母はあの通りですが、黒沢の両親は割とのんきなタイプの人だと思います。
名字は白⇔黒、峰⇔沢の組み合わせで、名前は、あやかを先に決めて、音がかぶらないようにゆりねを決めた記憶があります。あやかにした理由はなんとなくです。
どちらもひらがななのは、漢字を書くのはたいへんだからです。下の名前めったに使わなかったけど……。あやかは瑞希が「あやかちゃん」呼びだったのでいくらか使いましたが、ゆりねは本当に使うところがなかったですね…ゆりねと書くたび「そういやそんな名前だったな」と思ってました。妹のすみれと母音が同じところが気に入ってます。
黒沢ゆりねは、柚木麻子先生『終点のあの子』の登場人物である奥沢朱里の影響を受けているので、沢の字はそのへんも関係あるかもしれないです。明確に意識したつもりはないんですが。
書き出してみると「あのこ」なのも影響を受けているのかもしれない…『フォーゲットミー、ノットブルー』好きな話です。
黒沢の人間性は1,2話が最低で徐々に上がっていくつもりだったんですけど今4巻とか見返すとここまできても普通に性格が悪い。
もともとツンデレが好きなので白峰は描いてて楽しかったです。前髪短めなのも、黒髪ウェーブロングなのも、いい人なのに友達がいない(と本人が思っている)のも私の趣味です。後半の打ち合わせの頻出ワードは「まあ白峰さんには友達がいないんですけど…」でした。
白峰は、親との確執もありましたが、世話焼きなのも負けず嫌いなのも生まれ持った性分なので、多分ずっとあんな感じで生きていくのだろうと思います。
キャラクターを作るとき、かなりはじめに星座(not誕生日)を決めることが多いのですが、白峰はおうし座、黒沢はさそり座(10/26生まれ)です。
激個人的な話ですが、これまでの人生で半端なくお世話になった人間がだいたいおうし座だったので、白峰はおうし座にしました。
◆瑞希と萌
基本的に白峰・黒沢と対になるように考えたCPです。
白峰がツンデレなので萌は素直クール、黒沢が天才なので瑞希は凡人代表です。萌は描いてるうちに素直クールから徐々にズレましたが…
ここだけ名前に関係性(白⇔黒みたいな)が無いのはかなり初期にキャラクターを作成したからで、その時点で白峰と黒沢には名前の関係性がありましたが、その他のキャラにはなかった名残です。超初期のネームでは瑞希とファンの後輩の話がメインで、萌は出番も少なくほとんど喋らないミステリアス美少女だったりしてました。
瑞希はポジション的に「学園の王子様」を付けましたが、性格的立ち位置でいえば「白峰の姉」が最も近いと思います。
瑞希は萌がいなかったら、髪も切らないし目立たないで卒業するだろう人なので、方々からヘタレ呼ばわりされましたけど、彼女はポジションに対して気が弱いだけで…中身は普通なので…(擁護)いやメンタル雑魚だったな……(思い直し)でもなんだかんだ白峰のいとこなので肝心なところでは負けず嫌いのほうなのではないかと思っています。
萌は当初の予定ではあまり物語の表に出てこない高嶺の花で、イメージは綾波系美少女でした。予定が変わって萌が前面に出てくるようになり、瑞希とバランスをとるためにどんどん気が強く自信がある女になっていきました。
当初は2巻か3巻で連載が終わる予定だったため、1巻3,4話がふたりの話のすべてになる予定でした。
おかげさまで連載期間が延び、4巻で2度目の夏を描けるとなったときに、陸上部を描くならこのタイミングしかないと思い、部活引退からの夏祭り編を描きました。20話の内容はもともと描けるなら描きたいと思っていたので、キスシーンまできちんと描けてほんとうによかったと思っています。
将来的にはたぶんあの感じの関係性がずっと続いていくのだと思います。
瑞希はてんびん座、萌はおひつじ座です。
◆伊澄と千春とときどき愛と真夜
真面目な風紀委員×バカだけど良いヤツという鉄板すぎるCPです。
でも今思い返せば千春は真面目な風紀委員キャラとは微妙に違うような…字面が合ってるだけのような…結構ガラは悪かったような……
名前は、日下部(下):上原(上)、日下部(日):秋月(月):星野(星)で完璧だ…と陶酔していたのに、秋月(秋):千春(春)でも被っていてアレ!?って感じでした。
伊澄の名前は、キャラ設定時に読んでた『こどものおもちゃ』の加村直澄くんから一字拝借した記憶がありますが、直澄くんとは別に似てないっていうかどちらかといえば千春の方が近いような、それさえ遠いような気がするので、謎です。キャラを作る時に19時のニュースを延々と聴いていたから…?
19時のニュースの他はポルノグラフィティのハネウマライダーを延々と聴いてたので、伊澄には最初はバイクに乗ってもらうつもりでした。後輩キャラになり15歳になったので自転車にしましたが、早めにバイクの免許取ってほしい気持ちがあります。
愛と星野先輩については、お互い「学生時代のいい先輩といい後輩」という間柄でずっと交流は続くんだろうと思います。
千春と伊澄については、性格の不一致で衝突しなければ、未来でも一緒にいると思います。
伊澄がいて座、千春がおとめ座、愛がうお座、星野先輩がかに座です。
90度の関係が好きなのがバレそう。
◆雪奈と十和子
ライトな主従百合CPです。
3巻に関しては、面倒な展開やキャラクターに対して「一発殴って解決しろ!!」と思っていた時期だったため、もっとも重要なシーンは雪奈が十和子をグーで殴るシーンです。世の女性キャラには女性キャラへの感情をこじらせた末に相手の頬をグーで殴り飛ばしてほしい。
世界一エモいロケーションは歩道橋だと思っている人間なので、殴りのシーンをそこで展開できて満足です。
伊澄もそうなのですが、火星座的な直情型キャラクターは描くのが楽しいです。この漫画を客観視したとき一番自分の好みのキャラクターは雪奈だと思います。
雪奈は口調も見た目も立ち位置もボケツッコミどちらもそこそこやってくれるところも全て描きやすかったです。それと黒沢との先輩後輩関係が個人的に好きだったのでたびたびねじ込みました。熱血直情型先輩+クールな後輩だと思うと鉄板な感じするんですけど、微妙に凹凸がかみ合ってない感じがいいと思います。
雪奈はしし座だろうと思うのに名前に「雪」の字を入れてしまったために夏生まれにしづらい哀しさ。多分家の方針的なあれで子供の名前に雪の字を入れる的な感じだったのでしょう。
十和子の考えについては、友人の間でも「よくわかる、というか昔考えた」という人と「さっぱりわからない」という人がいたので、キャラクターの思考を伝えるのは難しいなと痛感しました。
十和子を描くにあたってのこだわりポイントは、一重まぶたである点と、幼少期の服のサイズが大きくデザインがボーイッシュ(兄のお下がりを着てるから)な点です。十和子の一重は川内くんが気づいてくれて嬉しかったです。
名前は雪奈(ゆきな→せつな=刹那)と十和子(とわ=永遠)の流れです。気に入っています。
将来的にも関係としてはあまり変わらず、それでもお互い補い合いながら一緒にいるんだろうと思います。
雪奈がしし座、十和子がうお座です。
◆郁と小萩ともみじ
友情について考えていた時期で、2人だとこれまでのCPとまざって友情感が薄れそうだったので3人組にしました。
猪鹿蝶と、それぞれ萩・紅葉・牡丹(→香り→かおる→郁)というネーミングですが、郁は2巻の小劇場で名前の読みだけ設定していて、小萩ともみじはずいぶん後に作ったキャラなので、郁の名前についてはかなり無理矢理な後付けです。
郁は、連載開始前の2巻で終わる予定だったころからすでに存在していたキャラクターで、話を組み立てているうちに郁(と黒沢)の話まで行き着かないかもしれない…と思い2巻小劇場への登場で終わらせていたのですが、連載期間が延びたことにより18話で無事本編に登場させることができました。
4巻の後もちょいちょい出てきては地味に不遇なポジションに収まっていてかわいそう。でも最後のあたりで黒沢から見て重要人物な動きができたし、友達にもなれたので、彼女的にはあれでいいんじゃないかなと思ってます。
もみじに「年上(社会人)の彼女がいる、かもしれない」という設定だけあったのですが結局使われず終わりました。
◆紗和といつき
とにかく好きな要素を詰め込んだCPを作ろう…と考えて作ったCPです。
端的に言うと「顔の良さですべてを帳消しにする察してちゃん」と「察せないけど力業で突破する鈍感」の組み合わせです。
プラス、学園ものにはパパラッチが必要という偏見によって広報委員会になりました。
ベースは「バディものがやりたい」だったので(あんまり反映されてない感じがしますが)ノートを漁ったら「紗和がワイルドタイガー、いつきがバニーちゃん」って書いてました。わかるようなわからんような……。
いつきは話を組み立てていくうちに「モデル系美人幼馴染後輩(女児アニメ好き)(激チョロツンデレ)(重い・情緒不安定・面倒くさいの三重苦)」というキャラになりました。厳密にいうと自分の趣味に基づいているのは24話までのいつきなのですが、25話以降もヤバいやつとして皆様に愛されていたようなのでよかったと思っています。
紗和についてはキャラデザ時点では「P4の千枝ちゃん」「ダンガンロンパの真昼ちゃん」が念頭にあったようです。ゆきちえ好き。
紗和が弓道部なのは、特に調べなくても中身が大体わかるのが弓道部だったからです。
名前については素直に東西です。メモには(恐らくモブで)北と南の名前を持つキャラを出そうとしていた痕跡がありました。
紗和がやぎ座(12/26生まれ)、いつきがてんびん座(10/14生まれ)です。
◆あまねと仁菜と諒
あまねというキャラクターと、30話の最後、あと仁菜と諒のやりとりや関係性が描きたくて描いた話です。
仁菜諒と比べるとあまねは、あの話数でやりたいことをやりきるために若干人間性が犠牲になってる面があるかもしれないです。すまないあまね。
完全に語感優先のサブタイ「あまねくViolet」気に入っています。
漫画内で亜麻祢のほとんどがひらがな表記なのは単純に漢字を書くのが大変だったからです………なんで漢字を設定した?
基本的に名前の画数が多いとつらくなるので「瑞希」とか「藍花」は大変でした。
名前は朝・昼・夕の組み合わせです。
諒と仁菜のハンドルネームも、比留間→まひる、夕凪→シンヤ(深夜)で時間帯のネーミングになっています。
◆灰音と藍花
万能型の天才キャラと秀才キャラがいるし、一点特化型の才能キャラもいつか描きたいと思っていたので描きました。あとは師弟百合もいずれやりたいもののうちのひとつだったので、灰音という一点特化天才が藍花という師を超える話がベースです。基本的に高校生が出てくる学園もので、あまり大きな歳の差ができないなという気持ちもずっとあったので、叔母×姪で雰囲気おねロリみたいなのも目標にありました。
それと風呂です。
「家族だから」「昔は一緒に入ってたから」という言い訳の道筋を横に置いたとしても、とにかく風呂…風呂だな!と思い風呂をねじ込みました。疲れていたのか?
音楽の素養が微塵もないことがコンプレックスな人生を歩んできたので、ここで自分がピアノを描くことになるとは思いませんでした。
実際にピアノを弾かれる方にいろいろお話を伺うことができて、大変勉強になりました。自分が漫画を描くのでいろいろなものを漫画ベースで考えてしまいがちなんですが、漫画を描くのとは前提の感覚が違っていて面白かったです。
7巻の頃は、6巻のキャラクター作画カロリーが高すぎたのでは?という反省からカロリー控えめな作画を標榜していたので、見返すとなんとなく雰囲気が違いますね。8巻に入った頃にカロリー低すぎて不安になったので徐々に元に戻すようにしました。
名前は、青は藍より出でて藍より青しって感じです。
灰音は白黒の中間キャラというイメージだったので灰の字を使いました。中間と言い切るにはピーキーな感じのキャラになった気がします。
あとは「四季の歌」が意識にあったような気もします。
◆龍海と虎山
元のコンセプトは「白峰と黒沢のアナザーEND」です。
・お互いを全然救わないふたり
・こいつといて良いことひとつもないけどなぜか一緒にいる百合
・外から見たらお互いのこと大好きだな!?ってなる百合(平行線のままで交わらない百合)
というコンセプトのメモがありました。最高のやつだな!?
関係性として「ライバル」は大好物なんですが、それのどこが好きなのか?を考えた時に、「相方の人格が気に入らなくても能力に惚れてさえいれば成立するから」という点なのかな~と思いました。「顔が好き」に近い感じ。
その点で、白峰と黒沢は相手の人格面の評価が上がってきていてむしろ「仮に能力がなくなっても隣にいてほしい」という方向性に進んでいたので、違う方向に分岐するCPが描きたくて描きました。相手の能力には信頼を置いているし、となりに立つのも自分以外にはいないと思っているけど、それでも人格面でソリが合わないふたりぐみ、良い……。
龍海は「かたい口調で喋る高圧的で効率厨な女」で初期から一貫していますが、虎山は結構紆余曲折を経てあのキャラクターに落ち着いた記憶があります。最初の最初はもっと美風に近かったのですがいろいろあって白峰に近いキャラに…。終盤は白峰さんと仲良くなってたみたいでよかったなあと思います。
名前はそのまんま龍と虎です。とにかく強そうな名前にしなくては……と思ったので思いつく限り強そうな名前にしました。(白黒から色つながりで)金と銀とかの案もありましたが、やっぱライバルだと思うと龍虎かな…と。
白黒と関連付けるために海と山(沢と峰)もくっつけて、名前もひらがな三文字で統一しました。
◆明日花と美風
友人にコスプレイヤーがいて、いろいろ連れていってもらったことがあるのでその経験と、友人の話をもとに描きました。
その友人に「今の主流はスケブで名刺ではない」と教えてもらったのですが、名刺交換って文化が好きだったもので、昔の知識でお送りしています。
9巻は白峰と黒沢の話をするにあたって「特別」と「普通」について考えていたので、新規キャラクターの話もそこにスポットをあてるべきだろうということで、「特別」な女の子・明日花と、「普通」な女の子・美風が生まれました。
名前は、明日花・飛鳥(HN)・美風・萩月(HN)で花鳥風月です。
花鳥風月いつか使いたかったんですが、四つ一組はなかなか使う機会が見つからず9巻まで使えずにいました。
あと明日花が「桜田」なので、美風は秋っぽい植物のイメージで「萩元」です。作中の季節は冬ですが……
明日花はコスプレ含め外見がコロコロ変わるキャラにしたかったので、変わらない特徴を付けるなら口調かな…と思って博多弁にしました。
私は仙台弁しか使えない人間なので、提出したネーム(標準語)を元に博多弁ネイティブの方に変換していただきながら進めました。その節は本当にありがとうございました。
裏話的テキストは以上です!
あのキス、ドラマCDまで含めて愛していただけて嬉しいです。ありがとうございます!今後もやさかん含めよろしくお願いしますね!

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